第七章は成熟している印象@ゲーム・オブ・スローンズ
過去6年間の総決算とまでは言えませんが、過去に撒いてきたパンくずを拾い出してる側面(伏線回収)があるのではないか?との意見も出ています。
単にストーリーだけを追っていると気づかない、深いところに意味が込められている・・・という印象を私は受けました。
D&Dは当初、「第七章は会話を中心に軽いアクションで構成にするつもりだった」とインタビューで答えていました。
それは最終章の前に軽く流す程度ということではなく、人間のより深いところの心理を重点にしたかったのだろうと思えます。
結果的にはその意図を保ちつつ、人間同士の大規模な戦いを「これでもか!」というくらいに盛り込んだのでしょう。
ではさっそく、ドラマを見終わった後、「面白かった~」「つまらなかった」だけで終わらない人のために(?)、第七章第一話を検証したいと思います。
以下はネタばれしています。未見の方は注意。
まずは、サーセイとジェイミーのシーン。
ジェイミーはサーセイと距離を取って立っていました。それは二人の間に距離が生じてきたことを表しているようでもあります。
ジェイミーがトメンの自死の件をサーセイに言った際、彼女は「私たちを裏切った」と答えました。それは何を指して「裏切った」と言ったのでしょう?
自ら死を選んだこと?
ハイ・スパロー側についたこと?
恐らくはその両方でしょうね。
サーセイはトメンを大聖堂へ行かせませんでしたから、死なせたくはなかった。
そういう母心よりも、トメンはハイ・スパローや彼に毒されたマージェリーの元へいくことを選んだ。それがサーセイにとっては「裏切り」なのでしょうね。
一方で、サーセイは魔女の預言通りになったことを見届けた感もあるでしょう。
子供たちの死は預言通りであって、自分に落ち度があったわけじゃないと。
サーセイは「できる限り、その死を阻止しようとした」と自負してると思います。
サーセイ 「私が恐ろしい?」
ジェイミー「恐れるべきなのか?」
サーセイ 「・・・・・」
続いて、ジョンとサンサ。
スターク家を裏切ったアンバー家とカースターク家に対する処遇について、二人の意見は対立しました。
ジョンは諸侯たちの前でキッパリと「スターク家に改めて忠誠を誓うなら処罰しない」と言いきった。
サンサはそれが気に入らない。
では、なぜ二人は対立してるんでしょう?
お互い見ている「敵」が違うからです。
ジョンは夜の王を見ていて、サンサはサーセイを見ている。
実際に夜の王に遭遇し、死の軍団の恐ろしさを見たものは七王国の中でほんの僅か。
当のナイツウォッチたちでさえ、ジョンが夜の王に対抗するため野人を壁の南側へ入らせた決断を理解できずにいたのに、サンサが容易に理解できるわけではないです。
サンサは人間の恐ろしさをずっと味わってきました。
彼女にとってはサーセイの方が脅威。
その辺のことを二人は話し合っておらず、北部はどの脅威に対しどう対応すべきなのか共有していないことがわかるシーンでした。
サンサはジョンに「父や兄は賢くなかった」と言いました。
彼女が今まで王都で見たり体験したことは”政治的”な部分であり、父と兄は戦場で戦って死んだわけではないということを言いたかったのかな?と思います。
死の軍団だけに固執していると、足元をすくわれるとサンサは感じているのでしょう。
なんせ、サーセイは個人的な思惑で鬼火を使って多くの人をふっ飛ばしましたからね。
人間の方が夜の王よりも残忍で恐ろしいかもしれません。
そして、もうひとつの脅威がウェスタロスへ来ました。
それはドラゴンです。
次は、ブラン。
あの僅かなシーンだけで、ブランは三つ目の鴉となったことを示したと思います。
ミーラが自分たちの名をエッドに告げ、エッドは「証拠はあるのか?」と尋ねた際、ブランは夜の王が迫ってきていると言いました。
「ジョン・スノウの弟」とは言わず、夜の王の話をしたことに違和感を感じた人も多かったようですが、その違和感をあえて感じさせる会話だったと思います。
ブランが壁の南側へ戻るのはブラン・スタークとしてではなく、三つ目の鴉として人類に準備させるためだということでしょう。
アリアのラニスター兵たちとのシーンですが、兵士と言えども普通の青年であり、彼らにも家族がいるということを示しました。
「物事は黒か白ではない」というGRRMの考え方を取り入れているシーンですね。
戦争などのバトルシーンでは、このような人々が死んでいく。
第二章で、タリサがロブに指摘した事柄です。脚を切断したラニスター兵をタリサは「彼は漁師の息子で武器など持ったことはなかった」と言いました。
それと繋がってると思えました。
もしかすると、どこかのバトルシーンでアリアが出会った兵士が出てきて、呆気なく死んでしまうかもしれません。
その時、私たちが何を感じるかが重要です。
最後は、今回パンくずを拾っていたハウンド。
第六章のハウンドとブラザー・レイの会話を思い出してみて下さい。
すべて繋がっています。
レイや村人が虐殺された直後、ハウンドは復讐するために斧を握って昔の自分に戻りましたが、今回ハウンドは自分の使命に覚醒しました。
そのキッカケとなったのは、第四章で出てきた父と娘の死。
ハウンドは過去の自分を省みて後悔し、レイの教えが過ぎったという感じ。
こういった伏線回収は素晴らしいですね。
あと特筆すべきは、デナーリスのシーンです。
「始めましょうか」と言うまで、皆無言です。
ドラゴンストーンに到着し、城の中を歩くデナーリスの姿をじっと見つめる視聴者は彼女がどう思っているか想像し、今まで見たことのなかった城の内部を一緒に見ていく。
台詞に頼ることなく視聴者の感じるままにする。
無言であるからこそ多くを語っているのです。
これらのことから、第七章は成熟してきていると感じました。
★゜・。。・゜゜・。。・゜☆゜・。。・゜゜・。。・゜★